「街を探そう。少しでも可能性のある動きをするべきだ。そんなやつ殴ったところで解決しやしない。寧ろ,エヴィーに怒られる」



悔しい。

魔女と呼ばれる女性の位置も,限り無く正しいエヴィーの所在も分かっているのに。

こんな遠回りな事しか選べない自分が。

この壁を越えて,その笑顔に逢いたいのに,助けたいのに。

僕達には,たったそれだけの力すらない。



「ノア」



殴りかかるのをやめたダニーは,僕の手をどけて振り返る。



「あの家の屋根から,俺が走るのに合わせて足場を伸ばしてくれ」



それなら,最低限の魔法で済む。

それくらいの技術なら,僕は持っている。

でも。



(僕だって,僕だって出来ることなら)



そうしたいさ……ッ!!!



他人の家へと足を向けるダニーに向けて,僕は手のひらを向けた。