「やーあ。圧巻ですな」



壁を見上げて,何者かが近づく。



「またお前か」



ダニーは冷静に振り向いて,いつも僕らのそばに立っていた男に問いかけた。



「城からは,森のてっぺんにまるで要塞のような城が建っているのが見えましたよ。一体彼女は何を隠して閉じ籠っているのでしょう,あぁ本当に美しい」



ピキリと氷が軋むような音が胸に響く。



「昔よりずっと才能を開いている。彼女だけの魔法。……ところで,勇者の少女が見えませんが。あなた達はどうするのです? また1から特訓でもなさっては?」



ザリ……

そうダニーが足を踏みしめた音がした。

力を持ったダニーの肩を,利き腕で押さえる。



「離してくれ,ノア。分かるだろ」



(そうさ,君の気持ちなら,少なくともこの国の誰よりも分かる)



その気持ちの分だけ,僕はダニーを止める腕に力を込めた。

めり込んで,それでも僕は退かない。