(全て,何もかも)
エヴィーを受け入れた,そして拒絶した,私のせいなのに。
「よか,た。わたし,のうんめ……ちがっ,た」
(何もよくなんてない。運が,なに……?)
聞き取りたい言葉すらまともに拾えない。
ーやめて。
1拍,たったそれだけだった。
他に沢山あるだろう恨み言も,将来のことも。
何一つ言葉に残せないまま,エヴィーは私の目の前で絶命する。
信じたくなかった。
ずっと傍にいてくれた,私の大切な,大切な……
(何?)
弟子以外の全てに見ないふりをした。
決めてしまうのが怖かった。
それでいいはずだったのに,無責任な私の行動が,幼く暴力的な感情と魔法が。
私の全てが,何よりも優先されるべき綺麗なエヴィーの命を,奪い去ってしまった。
私の手で,最後に唯一残っていたはずの存在が。
今,永久に失われ,届かぬ人となった。
死ぬのかと思うほど,呼吸が苦しい。
溢れる汗と涙はとても止まらず,開いた口は息を吸うことも吐くこともしない。
口の中に空気がたまっているのに,喉を通らない。
まるでこの世から全ての酸素が失われてしまったかのように,ティッシュでも口に詰められているような感覚になる。
全身がひどく痺れた。
何をしたら,何のために生きていたらいいのか,何のために生きていたのか分からなくなる。
ひどく締め付ける頭の痛みは,脳が内側から爆発するかのようだった。