誰よりも強い魔導師として卒業させなかったのは,師匠である私の失態。
もし,私が師匠であることに全うしていたなら……こうして魔法に敗れるのは,エヴィーではなかった。
エヴィーを襲った魔法を,今抜き取ってはいけない事くらいは私にも解る。
だからと言って,救う方法までは分からない。
(止血したところで……)
こんな森の中に医者はいない。
いるのは,魔法が人より少し器用に使えて,人より少し勉学や発明が得意だっただけの,引きこもりの魔女ただ1人。
どうにかしなければと思えば思うほど,そんな暇はないのに後悔ばかりに見舞われた。
喉がからからと渇いて,鼻がつんとする。
意味のない母音が溢れるばかりで,震える指先一つ制御できなかった。
「エルさん……」
息も絶え絶えのエヴィーから言葉が飛び出したことに驚く。
やめなさいと制止したくなるも,しゃっくりに変わって言葉は出なかった。
みっともなくしゃっくりを繰り返して,目を限界まで見開く。
「ごめ,んね。なかない,で……」
こんな時まで愚かな魔女を心配している元弟子の女の子。