この陽気な声の持ち主は、担任である酒井先生。たしか20代半ばで、明るい性格とノリが良いことから、男女問わず人気な先生。

「松田ー!ごめんなぁ、いっつも雑用頼んじゃってぇ」

顔の前で両手を合わせ、申し訳なさそうにしている酒井先生。

「いえ、先生も大変でしょうし。全然大丈夫ですよ。」

そう微笑んで言うと、酒井先生は嬉しそうな表情にをした。

「松田ぁー、お前は本当に良い奴だよぉ、ってことで、このプリントをホチキスでまとめておいて欲しいのと、今日の放課後までに国語のノート集めて俺の所に持ってきて欲しいんだよ。」

たしか国語は、酒井先生が教えている教科。

「分かりました。」

そう言うと、酒井先生は「本当に助かった!」と言って5種類くらいのプリントの束を渡してきた。

なるほど、ちょっと量が多いけど、今日中に終わりそうだな。

「いつまでに終わらせればいいですか?」

私がそう聞くと、酒井先生は若干気まずそうな表情になる。

「えっとねぇ、1時間目始まる位までには終わらせて欲しいんダヨネェ...」

え?1時間目始まるまでにこれまとめられる?

「あっ、先生用事思い出したぞぉ...って事で、松田さんお願いねぇ」

そう言って酒井先生は逃げるように自分の席へ戻って行った。

はぁ、これ終わるかなぁ、
とりあえず、これを早く教室まで持っていこう。

「失礼します。」

そう言って職員室を出ると、久我くんが私に気づきこちらへ向かってきた。

「松田さんおかえり...って、わぁ、すごい量。」

久我くんが私の持っているプリントの量に若干冷や汗をかいている。
たしかに、この量を見ればそうなるよね...あはは。

「これ、放課後までにまとめるの?」

「えっとね、実は1時間目始まるまでにやらないといけなくて...」

「え?1時間目始まるまで?そんな短期間でこれは難しくない?」

たしかに、これを1人でやるのは少し無謀...だよね、

「じゃあ、そういう事だから私教室戻るね。ここまで着いてきてくれてありがとう!」

私が久我くんにお礼を言うと、久我くんは首を少し傾げた。

あれ、私なんか変なこと言っちゃった...?

「もしかして、これを1人でやろうとしてるの?」