「そ、そうかな…なんていうか…お礼を言うといい気持ちになるから」

そう言うと、陸斗くんはぼーっとして私のことを見つめている。

な、なんだろう…

「恵麻さんって、本当にいい子だね」

優しい笑みを浮かべ、私の頭に温かくて、男の人らしい手だけど、すごく綺麗な手を優しく置いた。

その手の温もりや、感覚、陸斗くんの表情に心臓が爆発してしまいそうなくらいドキドキしている。

すると、急に頭の上にあった陸斗くんの手の感覚が無くなった。

「おい、どういう事だよ」

「り、りゅうちゃん？！」

陸斗くんの手を私から離したのは、怖い形相をしたりゅうちゃん。

「あ、甲田くん。おはよう。」

「おはようじゃねぇ…俺はどういう事だって聞いてんだよ…」

「えぇ、どうしたの甲田くん」

少し困り顔な陸斗くんを睨むりゅうちゃん、そして私。

ど、どうしよう…
そんな状況になって数分。だんだん周りに人が集まってきてしまった。

「なになに、揉め事？」

「あれ、甲田龍騎じゃない？」

私、注目されるの苦手だし、さらに揉め事も大の苦手。

「恵麻、ちょっといいか？」

すると、りゅうちゃんが場が悪そうな顔で私を見てそう言った。

「う、うん...」

私がそう言うと、不機嫌そうなりゅうちゃんは私の腕を握り、引っ張るように歩き出した。
私は、なぜりゅうちゃんがそんなに不機嫌なのか分からないまま、りゅうちゃんに着いて行った。