「ふふっ、すみません…少しからかっていたら、反応が面白くて、結構コーヒー飲めない方いらっしゃるので、大丈夫ですよ。」

「なっ、からかってたって…もしかして狐野田さん、ドSですか…?」

そう言うと、狐野田さんは笑いながら「それはどうでしょうね」と言って食器を持って行ってくれた。

「恵麻様、もしかしたら慶が首を長くして待ってると思いますので、そろそろ行ってあげてください。案外面白い方でビックリしました。私の遊びにお付き合いいただきありがとうございます。」

そう言って、「それじゃあ行ってらっしゃい」と手を振り送り出してくれた。
私も「行ってきます!」と行って、慶くんがさっき出ていったドアを開け、慶くんの元へ行く。

そう思ってドアを開けたら、腰が抜けてしまいそうなほど怖い形相で慶くんが立っている。

「おい、遅い。食器を持っていくだけで何分かかるんだ。お前はカタツムリか」

慶くん、すごい不機嫌オーラが漂っている…

「ご、ごめん慶くん!待たせちゃったよね、本当にごめん…」

「別に…ほら、さっさと行くぞ。」

そう言ってスタスタと歩いて行った慶くんの後ろを、私は追いかける。




「え、こ、この車で行くの…?」

玄関を抜けた先には、黒の大きな車が停まっていた。
よく、ドラマや漫画で見るような高級車。

「当たり前だろ。ほら、早く乗れ。」

そう言って乗って行ってしまった慶くん。
どうしよう…どう乗っていいか分からない…
きっと普通に乗ればいいんだろうけど、こんな高級車乗ったことないし、靴とか脱いだ方がいいのかな…だってこの車、カーペットじゃない?凄いふかふか…

「恵麻さん、大丈夫?」

そう迷っていると、陸斗くんが扉からひょこっと顔を出した。

「えぇ、陸斗くんいたの?!」

「うん。今日は親父との話が長引いたっていうのもあるけど、恵麻さんと一緒に登校するのすごい楽しみにしてたんだ。」

そう言って柔らかい笑みを浮かべて手を差し伸べた陸斗くん。

陸斗くん…
紳士的な対応に、不意に少しドキッとしてしまう。

将来、結婚するなら、こんな人がいいな…
…って、私ったら何考えちゃってるの?!