「うん、実はコーヒー飲めなくて…」

私がそう言うと、慶くんは「はぁ…」と言ってコーヒーが入ったカップを取り、コーヒーを一気に飲んだ。

「ふぅ…じゃ、これ狐野田さんの所に持って行って。俺は外で待ってるから。」

そう言って立ち去ろうとしている慶くんに、私は「あのっ、」と呼び止める。

「一緒に、行ってくれるの?」

「外で待ってる」ってことは、一緒に行くから待ってる…って意味だよね?

「当たり前だろ。前言っただろ、登下校の見送りはするって。」

あ…確かに言われてみれば、言っていたような

「ちなみに、お前と俺、2人きりな訳じゃないならな。勘違いすんなよ。」

そう言い残し、慶くんはドアを開けて出ていった。

「あれ、慶もう行っちゃいましたか?」

私がドアの方を見ていると、狐野田さんが奥の方から出てきた。

「あ、狐野田さん…これ、すごく美味しかったです!」

「あぁ、ありがとうございます。次からはコーヒーでは無く、紅茶にしときますね。」

あ、もしかしてコーヒーが飲めないって会話、聞いていたのかな…?
だとしたら、私すごい失礼な人なんじゃ…

「すみません、こちらもコーヒーを出してしまって、先に聞いとけばよかったですね」

悲しそうな表情でそう言った狐野田さんに私はすごい申し訳ない気持ちになる。

「いえ!こちらこそ本当に申し訳ない…私がコーヒー飲めないせいで、そんな顔しないでください…」

私がそう全力で謝ると、狐野田さんは悲しそうな表情から、「フッ…」と吹き出し、笑いをこらえるような表情へと変わった。