「......きろ。...起きろ。」

視界が真っ暗の中、微かにそんな声が聞こえてくる。
このぶっきらぼうな言い方と、どこかで聞いたことある声。

「ん...」

暗かった視界が、徐々に明るくなる。

ここはどこだろう...
板張りの天井で、微かに畳の香りがする。

「おい、起きたか。お前寝すぎ。もう夜だぞ。」

さっき、不良の人の服の襟を掴んだ小柄の男の人が、面倒くさそうな表情でそう私に言った。

えっ?!夜?!

私はバッと飛び起き、スマホを開く。

どうしよう、こんな時間に連絡もなく帰らないって、絶対お母さんと冬麻とお父さん心配してるよ...!

早く連絡返さないと...って、

え?

お母さんに連絡をしようとしたら、1時間くらい前に、[話は聞いたわよ〜!ゆっくりしてきてね!]と連絡が入っていた。

話...?どういうこと?しかも、1時間くらい前はまだ寝てる時間だし...

すると、小柄な人はため息をついて、口を開く。

「陸斗が、お前の母親に、『しばらく娘さんを預かります。学校の登下校の見送りはもちろん、学業に支障が出ないように尽くします。恵麻さんが必要です』って言っていた。」

あ、預かるって...

「しばらく、家に帰れないってことですか...?」

顔面蒼白の状態で、小柄な人にそう聞いた。

「あぁ。そうなるな。俺らの事を安易に話されたら困る。まぁ、お前友達いないと思うけどな。」

さらっと失礼なこと言ったな、この人...

「そんな秘密にしないといけないんですか?」

「あ?当たり前だろ。バレたら、何されるか分からないからな。」

少し険しい表情で言った小柄な人。その表情から、この世界は大変なものなんだと察する。