そして、鏡の前に立ち、小さく、「よしっ」と声を出す。

学校の時の地味な格好とは違って、メガネを外し、前髪は整えて、髪型もストレートにした。

今日は、久しぶりに隣町に行くんだ。
だから、今日はオシャレして行く!ってずっと前から決めていた。

でも、似合ってるかな、この服。
前にお母さんとお買い物に行った時に買った、白のワンピースに水色のカーディガンを羽織っている。

すると、玄関の方からガチャっとドアの開く音が聞こえた。

…あ、冬麻が帰ってきた。

「ただいまー、ねーちゃ…」

冬麻は私を見ると、ピタッと動きを止めた。

私を見たまま動かない冬麻に、私は不安になってしまう。

もしかして、似合ってない…?

「ご、ごめん、この服似合わないよね、今すぐ着替えて…」

「そ、そうじゃない!」

私の言葉をさえぎって、大きな声でそう言った。

わっ、びっくりした…

「に、似合いすぎて、びっくりしただけだから…」

小さい声でぼそっと呟いた冬麻。
だけど、私にはその言葉ははっきりと伝わった。

すると冬麻は、真剣な表情で私を見つめた。

「だ、だから、自信持って。」

顔を真っ赤にしながらそう言った冬麻。

…冬麻、

「ありがとう、冬麻。おかげで凄い自信ついたよ…!」

「じ、じゃあ、俺自分の部屋行くから!気をつけていけよ!」

ビューンと効果音がつきそうな勢いで階段を上っていった冬麻。

ふふっ、恥ずかしくなっちゃったのかな…?

「うん!ありがとう!いってきまーす!」

2回に聞こえるように大きな声でそう言った。

よしっ!

私は心の中で気合を入れて靴を履き、扉を開け、私は隣町へ向かった。

この後、私の人生が180度変わるような出来事があるなんて、この時は少しも思っていなかった。