ふぅ…桐谷くんの、あの威圧的な雰囲気が苦手なんだよなぁ、
…って、だめだめ!まだあんまり関わってない人の事、早くも苦手だって思ったら!
いい所だってあるはずなんだし、

我ながら最低なことをしてしまったと反省する。

そんなことを思いながら、私はノートを先生にしっかりと渡し、玄関へ向かう。

「あ、恵麻。」

私がりゅうちゃんを見つけるより先に、りゅうちゃんが私を見つけた。

「りゅうちゃん!ごめん!遅くなった!」

「仕事なんだし仕方ないだろ。ほら。帰るぞー」

ふふっ、少し素っ気ない言い方だけど、恐らく気にしないでという意味で、優しさがこもっているのが分かる。
…もしかしたら、桐谷くんもりゅうちゃんに似ているのかもしれない。
そうしたら、きっと仲良くなれるかもっ、

「でさー、って、恵麻、大丈夫?ぼーっとしてない?」

「あっ、大丈夫だよ!︎︎"︎︎桐谷くん︎︎"︎︎!」

……
………
……

あっ。

やってしまった。

そして凄い静か。自分の心臓の音がはっきり聞こえるくらい静か。

「桐谷って、誰?」

「あ、えっと、今日初めて話した人で、ちょっとその人のこと考えてただけだよ!」

そういって誤魔化すように笑い、少し早歩きで歩き出す。

このりゅうちゃんの声色、確実に怒っている…

「待て。恵麻。」

ガシッとりゅうちゃんに少し強引に手を掴まれ、りゅうちゃんの方に引き寄せられる。

「何、そんな考えるって事は、その桐谷って奴が好きなのか?」

真剣な眼差しで、そう私に問いかけたりゅうちゃん。