「えー、最近治安も良くないので、皆さん気をつけて帰ってくださーい。」

酒井先生が何か資料を見ながら、みんなにそう言ってようやく放課後になった。

ふぅー、終わったー。

1時間って、短いけど長く感じるな…

「あ、そうだ。この前言ってたノート、松田に渡しといてくれー。」

酒井先生が、教室に響く声の大きさでそう言った。

…あ、すっかり忘れてた。

りゅうちゃんが登校して久々に話していたから、全然頭から抜けていた。

「恵麻、一緒に帰ろうぜ」

りゅうちゃんがそう言って私のところに来た。

「ごめん、りゅうちゃん私今日一緒に帰れないや。ノートを集めないと行けなくて。」

「そんなんサボればいいだろ。」

「あはは、そんなのダメだよ」

「あ、松田さん!はい、これノート」

「私もー!」

私とりゅうちゃんがそんな会話をしていると、クラスのみんなが続々とノートを持ってきてくれる。

「じゃ、俺玄関で待ってるから、終わったら来て。」

「うん!わかった!」

そう言いりゅうちゃんは教室を出ていった。

…だいぶノート集まったな、あと出てないのは、

久我くんと桐谷くんだけか。

久我くんと、桐谷くんはどこかな…

そう辺りを見渡すと、端の方にある桐谷くんの席に、久我くんと桐谷くんがいた。

でも、よく見ると久我くんと桐谷くんは、少し険しい表情で何かを話している。

これ、ノート回収しに行ってもいいのかな…
でも、りゅうちゃん待ってくれているしな、
…よし。行こう。

「あの、ノートってありますか?」

「あ?」

ひっ…

私を睨み低い声でそう言った桐谷くん。その姿を見て、心の中でそんな情けない声が出てしまう。

「こら、慶。ごめんね、松田さん、渡そうとしてたんだけど、すっかり忘れてた。これ、俺の分と慶の分。」

そう言ってノートを2冊丁寧に渡してくれた。

なんか久我くんの優しさにいつも助かっている気がするな、

「うん!ありがとう!それじゃ!」

なるべくここから直ぐに離れようと、私はみんなから集めたノートを持って教室を出た。