起き上がることを諦め、枕に頭を戻した瞬間――蓮人くんの言うように、授業の終わりを告げるチャイムが鳴る。


と同時に廊下に響く、慌ただしい足音。

その足音は、保健室に近づいてるようだった。


ガラッ


「桃子!」

「わぁ、皐月くんっ?」


どうやら私を心配し、授業が終わってすぐ駆けつけてくれた皐月くん。

「大丈夫?」と打った私の頭を、まるでガラスを触るような手つきで撫でてくれる。

その優しさに……胸が温かくなる。


と同時に、比較してしまう。


皐月くんに触れられて心は温かくなっても、体は熱くならないことを。

やっぱり私から出るフェロモンは、蓮人くんにのみ影響があるのだと。


「どうして……」


皐月くんじゃないんだろう、なんて。

そんなヒドイことを思ってしまう。