「惑わす? フェロモン? 特異体質……?」


意味が分からなくて、頭に浮かぶハテナマーク。

ちんぷんかんぷんな私に、蓮人くんは嚙み砕いて説明してくれた。


「つまりだな。桃子は異性を惑わすフェロモンを出せる。俺限定で」

「え……、蓮人くん限定?」

「そ。で、そのフェロモンにあてられたら最後、その異性も理性が飛ぶくらい相手を求めてしまうってわけだ」

「そんな……」


私が蓮人くんを惑わすフェロモンを出せる?

そのフェロモンにあてられたら、蓮人くんも理性を失う?

そんなの――


「ま、だからアレだ。昨日のもさっきのも、桃子の意志に関係ない事だから気にすんなってこと」

「う、うぅ~っ」

「桃子……泣くな」

「だってぇ……っ」


昨日の蓮人くんも、さっきの蓮人くんも、まだハッキリ覚えてる。



――どうなっても知らないからな
――はぁ~……っ、もう無理



あの時の……苦しそうに顔を歪めた蓮人くんを、覚えてる。