ザアア――――
激しい雨音で目を覚ましたのは、眠って10分くらい経ってからだった。
「ん……雨?」
「そ、大雨。にしても桃子、起きるの早いな。体は大丈夫か?」
「! ……だい、丈夫……です」
だ、ダイレクトに聞くんだね……。
私を思ってのことなんだろうけど、やっぱり蓮人くんの優しさは大胆だ。
顔にパタパタ風を送っていると、蓮人くんが「悪かった」と謝った。
聞き間違い?と思っていると、一拍あけて、また蓮人くんが謝る。
「桃子にひどいことした、悪い」
「え、えぇ……そ、それは私のセリフだよ!」
だって私がおかしくならなかったら……私が、変なことを思わなかったら、あんな事にはならなかった。
「私が蓮人くんを巻き込んじゃったんだもん。私が、全部悪いよ」
「桃子……いや、それはない」
「え」
両手でバッテンを作った蓮人くんは、スマホを取り出して画面を目で追った。
「調べてみたんだけど」の声と一緒に見せられた、スマホの画面には――
【 たった一人を惑わすフェロモンを放つ特異体質とは 】
という文章から始まるネット記事。