菜之花へ
僕を愛してくれて、ありがとう。

こんな事に、触れたくないけど聞きたいことがある。

病気、治らないんだね。

ごめん。気付かなかった。

今まで、辛い思いをしていたはずなのに…。

本当にごめんなさい。

僕は、きみの、残りの余命を一緒に過ごしたい。

良いかな?

ありがとうね。

清水洋より


「っと。」

それを書き終わって、僕は寝た。

朝。学校に行く前、固定電話に一本の電話が入った。

「はい。」

「あ、洋くん!」

菜之花のお母さんだった。

「じ、実はね…。
   ヒッグ」
嗚咽が混じっていた。

「菜之花が、亡くなったの!」

身体がガタガタと震えていくのが、分かった。

結局、最後の手紙は渡せなかった。













火葬の時、上手く動かない身体を必死に動かして、僕からの最後の手紙を棺の中に入れた。

「洋、くん。今まで、ありがとう。」

ふと、彼女のお母さんからそう言われた。

「いえ。こちらこそ。あの、棺の中に手紙を入れたんです。迷惑じゃ、なかったですか?」

「全然。ありがとう。あの子も喜んで、いると思う。病気の、事は、知っているんだね。ごめん、ね。助けてあげられなくて。」

「…………。」

「じゃあ、私は色々とあるから。またね。」

そう言って、別れた。