「ありがとう、愛華さん。俺、女の子に告白されるのって初めてで、すげー嬉しかった」
「え!?嘘でしょ?!」
椿の言葉があまりに衝撃的で、愛華はつい口を挟んでしまった。
「いや、嘘じゃないし」
「だって椿くんこんなにかっこよくて、優しいのに!モテまくりだと思ってたよ!?」
愛華の言葉に、また椿は少し顔を赤くした。
「いやいや、別にそんなかっこいいことないだろ。モテまくりってなんだよ、一度もないわ」
「そんな、馬鹿な…」
椿の発言の衝撃力が強く、愛華は目をぱちくりさせてしまう。
愛華にとってはもちろん誰よりも椿がかっこいいし、優しくて素敵な男子なのである。
でももしかして…と愛華ははたと思い当る。
(椿くんが美音ちゃんのことを好きなの、周りも気付いていたりする?だから誰も椿くんに告白しなかったのでは…?)
少なくとも藤宮はとっくに気が付いていたようだし、素直すぎる椿のことだ、周りにバレバレだったのではないだろうか。
「いや、そんなことはどうでもいいんだけど…」と照れくさそうに話を戻す椿は愛華にとってはやっぱりかっこよかった。
「俺、好きな人がいてさ」
「あ、うん…」
美音のことだ。その話は嫌というほど知っている。この耳で直接聞いたのだから。
「俺、ずっと幼なじみの美音のことが好きだったんだ」
「うん…」
「でも、…この前フラれた」
「え?」
「告白したんだ。バレンタインデーに。でも、フラれた。家族みたいにしか考えられないんだと」
「そ、そっか…」
なんと言葉を掛けていいか分からなかった。
椿も愛華と同じように、失恋して、その痛みを知っていたのだ。