「おお、ダリル殿が。承知しました。すぐに伺いましょう」


快く答えたエドガーは、エリーヌに「参ろうかね」と告げて立ち上がった。

いよいよダリルと会えるようだ。エリーヌはエドガーとともに声をかけてきた男性についていった。
ミッテール皇国の政治の要所でもある宮殿は、中に一歩足を踏み入れると忙しなく行き交う人たちがいた。

(皆さん、お忙しそう。国を背負って立つ方たちですものね、当然だわ)

普段ゆったりと生活しているエリーヌには考えられない速度で歩いている。ときおり振り返ってはエリーヌたちがちゃんとついてきているか確認する、案内人の男性もそうだった。優雅な雰囲気のパーティー会場とは全然違う。

大理石をふんだんに使った太い柱や豪華絢爛な調度品などに目を奪われながら階段をいくつも上がり、エリーヌたちは魔法省の魔石研究所にあるダリルの執務室に案内された。


「エドガー殿、エリーヌ殿、ようこそいらっしゃいましたな。ささ、こちらへ」


部屋の奥でダリルがルーペを外しながら立ち上がる。恰幅のいい彼は、息苦しいため普段からボタンのないダブルブレストを着ている。