「今、光らなかったか?」
「そう、ですね。……でも気のせいでしょうか」
「うーむ。たしかに今日は雲ひとつない晴天だがね」


空を仰ぎ見て目を細めるエドガーに、エリーヌも倣う。太陽を遮るものはなにもない。
やはり日光があたった加減で光って見えたのだろう。

リオネルの姿が見えなくなると、エリーヌたちはもう一度ベンチに腰を下ろした。


「皇帝陛下とお近づきになりたかったわ」
「今日はお話しできると思って来たのに残念だわ」


いっさい隙を見せず、あんなふうにして足早に去ってしまっては会話も無理だ。皇妃候補を集めたパーティーだと聞いたが、いったい誰がどう選ぶのだろうか。
不可解に思いながらペリー酒で喉を潤し、エドガーを見つけて声をかけてくる貴族たちと挨拶を交わし合う。

誰と話しても場違いな気持ちは膨らむばかり。煌びやかで華やかな世界に尻込みしつつ笑みだけは絶やさずにいると、二十代後半の男性がエドガーに声をかけてきた。


「ヴィルトール侯爵、失礼いたします。フローレス侯爵が研究所のほうでお待ちなのですが、ご足労願えますか?」