(陛下……)

思わず手紙ごと抱きしめる。


「陛下はエリーヌ様がご心配のようですね。やはり愛されている証拠でございます」


アガットは自信たっぷりに説いた。

(陛下が私を愛してる? ほんとに? ……いえいえ、自惚れてはいけないわ)

必死に宥めようにも、心は勝手に舞い上がる。


「仲の良いおふたりのおそばに仕えられる私も幸せでございます。さて、お茶でも淹れますね」


アガットがお茶の準備をしはじめたときだった。
ドアの外が急に騒がしくなる。


「困ります! 今日はどうかお引き取りくださいませ!」


ニコライの声だ。
顔を見合わせたアガットがドアへ向かい開けると、アンリの姿がエリーヌからも見えた。


「アガット、聞いてくれない? ニコライが帰れって僕を追い払うんだ」