(愛する相手だなんて、そんな。きっとちょっとしたお戯れだわ。だって、私はお飾りの妃だもの。愛が存在するはずはないわ)

そう言い聞かせてもドキドキは止まらない。そう言われたときの彼の顔まで思い出し、ぎゅうっと掴まれたように胸の奥が苦しくなった。


「あら? お手紙みたいです」


アガットが窓の外を見て呟く。釣られて見れば、封書が宙にふわふわと浮いている。


「取ってまいりますね」


アガットは窓を開け、それを手に取った。


「エリーヌ様に陛下からです」
「へ、陛下から?」


ひと際大きく鼓動が高鳴る。受け取った封書を開け、中から紙を取り出した。

【エリーヌ、体のほうはどうだ? どこか悪いところはないか? 部屋の外にニコライを待機させているから、なにかあったらすぐに伝えるのだぞ。今日はアガット以外、部屋には招き入れないように】

エリーヌを心配してくれている様子がひしひしと伝わってくる内容だった。