前例がないため、なにか特別なものだという期待でもあるのだろうか。しかし、もはやエリーヌのそれは、ただのガラス玉と化している。

ダリル同様にジョスランまで魔石を気に留めていたと知り、ますます縮こまる。しかも相手はずっと位の高い公爵だ。


「そうですか」


ふむふむといった感じに頷きながら、ジョスランは再びエドガーとの会話に戻った。

(やっぱりこういうパーティーは肩身が狭いわ。どこを見ても高貴な方たちばかりだし……)

皇都に暮らしているため、令嬢たちは顔見知りも多いのだろう。あちらこちらで楽しそうに話す姿が見える。
そして彼女たちの左手首には、エリーヌ同様に魔石付きのバングルがはめられていた。もちろん色付きだ。
赤や青、黄に紫、さまざまな力を秘めた魔力の印である。

(だけど、皇帝陛下のお相手を探す場だというのに、陛下御自身はいらっしゃらないのかしら)

エリーヌは皇帝の顔を知らないため、もしかしたらすでに姿を現しているのかもしれないが。もしもそうであれば、彼の周りには大勢の令嬢たちが集うだろう。そんな輪はどこにも見られない。