「あのさ、リオネル」


アンリは声のトーンを落とし、リオネルのほうに身を乗り出した。


「オスカーはどうなの? あの人、火属性だよね」
「ああ」
「リオネルが皇帝の座に就くときに唯一反対していたじゃん。自分がなるべきだって思ってたんだよね?」


たしかに彼はそうだった。皇族の中でただひとり、異を唱えた人物である。

アンリがいなくなれば、次は現上皇の弟である自分が皇帝になれると考えてもおかしくはない。


「オスカーを問いただしてみてよ。あっさり認めはしないだろうけどさ」


アンリは椅子に深く座りなおした。

リオネルも以前からオスカーには不審を募らせているが、確たる証拠がなければ問い詰めるのは難しい。弱腰なのではなく、もし本当にオスカーの仕業だとしたら、リオネルの動き次第では警戒を強めながら次の一手を繰り出す可能性があるからだ。

それならば油断させておくほうがいいのではないか。もちろん監視は必須で。