翌日、リオネルはニコライを引き連れシャルマン湖へやって来た。
あれからまだなにも掴めておらず、原点に立ち戻るためである。
「ここか?」
「はい、そうです」
僅かに残る魔力が、リオネルの足を現場へと引き寄せる。
(一日経過しているというのにかすかに痕跡があるのだから、相当強い魔力のようだ。だが待てよ。ならば放った場所になにも残っていないはずはないだろう)
あれだけくまなく捜索したにもかかわらず、現時点で宮殿内にはなにも見つけられていない。つまり、放ったのは宮殿ではないということになる。
そのとき不意にリオネルは、火とはべつの魔力をごく微量に感じ取った。
(これは――)
だがしかし、なぜ。
リオネルの眉間に深い皺が刻まれる。不可解なものを前にし、思考が混乱した。
「帰るぞ」
「はい」
ニコライとともに皇都へ馬を走らせる。