昨日エリーヌたちが到着したときには、側近から紅茶とお菓子の差し入れがあったが、ダリル本人は魔石研究所に詰めていて手が離せないと言っていた。


「おお、エドガー殿、遠路はるばる皇都まで大変でしたな。おいでになると耳にし、お会いするのを楽しみにしておりましたよ」


声をかけてきたのはジョスラン・カロン公爵、この皇国では皇族に継ぐ地位を与えられている権力者である。エリーヌがエドガーの養女となった幼少のときに、一度だけ会ったことがあった。


「ジョスラン殿、お久しぶりでございます」


互いに握手を交わし合い、軽い近況報告をし合った後、ジョスランの目がエリーヌに向けられる。


「こちらは……」
「エリーヌでございます。ご無沙汰しておりました」
「ほおっ、あのエリーヌ殿! これはこれはお美しくなられて」
「もったいないお言葉でございます」


令嬢たちに同じようにかける挨拶のひとつだろうが、身分の高いジョスランを前に委縮してしまう。


「その後、魔石の様子はどうですか?」
「えっ? あ、いえ、特に変わりはございません」