リオネルは重ねていた手を握りしめた。


「エリーヌが愛しい」


すんなりと零れた言葉で、自分の気持ちを知った。

そうだ、そうだったのだ。正体不明の胸のざわめきもアンリやオスカーへの子どもじみた嫉妬も、すべてそのひと言で説明がつく。
心清らかなエリーヌのそばにいるだけで癒され、これまで感じたことのない情に突き動かされてしまう。それらはすべて、彼女愛しさからくるものなのだろう。

エリーヌは目を丸くしたままリオネルを見つめた。
驚くのも無理はないだろう。五年後に離縁を提案した張本人から愛の告白を受けたのだから。


「案ずるな。エリーヌに私の気持ちを押しつけるつもりはない。ただ、私の想いを知ってもらいたかっただけだ」


口ではそう言いつつ、心の奥でべつの自分がそれでは足りないと駄々を捏ねる。エリーヌの心も欲しいと、身勝手な自分が今にも暴れそうだった。
そいつをなんとか封じ込め、紳士を決め込む。


「陛下のお気持ちうれしいです。ありがとうございます」
「ああ」