まるで、信じないリオネルに見せつけるかのように。
瞬間、彼女の指先がピクリと動いた。

(起こしてしまったか?)

しまったと思っている間にも長い睫毛がゆっくりと持ち上がる。リオネルを捕らえた瞳が揺らいだ。


「……陛下、お戻りになられたのですね」


体を起こそうとしたエリーヌを制す。


「体調はどうだ」
「はい、とてもいいです。どこもなんともありません」
「本当によかった」


リオネルは心からそう思い、深いため息とともに告げた。


「……そんなに心配を?」


エリーヌが不思議そうに尋ねる。仮面夫婦なのにと不可解なのも頷ける。


「ああ。エリーヌが目を覚まさなかったらどうしようと本気で怖かった」
「陛下でも怖いものがあるのですか?」
「自分でも驚いてる。だが本当だ。私は……」