「心配するのは勝手だが、瑠璃宮にまで出張ってくる必要はないはずだ」


リオネルの容赦のない言葉にオスカーは一瞬だけ寂しげな目をした。


「おっしゃる通りですね。……では今回の一件で、なにかわかったことは?」
「気になることでも?」


リオネルは質問に質問で返した。

オスカーは、リオネルが皇帝の座についたのを快く思っていない、ただひとりの人物である。気を抜けない相手なのだ。
彼の左手首には赤い魔石のバングルが巻かれている。言わずと知れた火属性の魔石だ。


「あ、いえ、どうなのかと思っただけですので」


オスカーは横目でチラッとアンリを一瞥した。


「そうですか。では私はこれで失礼します」
「アンリ、そなたも翡翠宮へ戻れ」


馬に乗り、去っていくオスカーを見送り、今度はアンリを諭す。