リオネルは自分の心の不可解な動きに戸惑いを覚えながら、ダリルの元を去った。
馬を飛ばし、瑠璃宮へ向かう。
リオネルは、ニコライ以下、騎士団に今夜は引き上げるよう伝えてきた。
宮殿からアンリを狙って放たれたものであれば、内乱の予兆にほかならない。だがしかし、矢を放った痕跡が見つからないのはなぜなのか。
宮殿ではない、どこかべつの場所から放たれたものだとすれば、どのような目的で誰の仕業なのか。
険しい表情で思考を巡らせていたリオネルだが、ふと胸元に忍ばせているサシェが香り、エリーヌを思い出し表情が和らぐ。
あの魔石には魔力が眠っている。
ダリルの言葉はリオネルを妙に納得させるものだった。
アンリの怪我をなんとかしたいという強い想いが、魔力を深い眠りから解き放ったのではないか。
そもそもエリーヌはオーラを纏って誕生したと聞く。両親に魔力がなかったため、魔石加工師の手配が遅れ、加工は失敗に終わったと。
しかしそうではなかったのかもしれない。魔力はしっかりと魔石に息づいているのだ。
そう考えなければアンリの一件の説明がつかなかった。
「止まれ!」