「これから魔力が開花するやもしれません。とにもかくにも陛下と妃殿下がおふたりともご無事なのは、この婚姻が間違いではなかったことの証ですな」


ダリルが夜伽を指しているのはわかったが、世継ぎ問題を避けるために〝していない〟とは言えない。いくら信頼のおけるダリルであっても、それだけは打ち明けるわけにはいかないのだ。


「魔石はともかく、陛下ご自身もお心の変化があったのではないですか?」
「というと?」
「エリーヌ殿との仲睦まじい様子は幸せを絵に描いたようでございますよ。普段、厳しい顔をしていることの多い陛下が、微笑みを称えていらっしゃるんですから。まぁ性根の美しいエリーヌ殿であれば、お心が動かされるのも当然ではございますけどね」


ダリルがニヤッと笑う。


「……私をからかうな」
「これは失敬」
「なんにせよ、これでお国は安泰です」


ダリルは愛おしいもののようにガラスケースに収まった魔石を見つめ、目を細めた。

(五年後に離縁……。私はエリーヌを手離さねばならないのか)

この胸のざわめきはなんなのか。