煌びやかな世界を目の当たりにしたエリーヌは、思わずごくりと喉を鳴らした。


「エリーヌ、そんなに緊張せずともよいのだよ」
「ですが、おじ様、やはり私は場違いのような気がして……」


いくらダリルがエリーヌを皇都へ呼ぶための口実とはいえ、皇族主催のパーティーへの出席は荷が重い。元男爵令嬢という引け目もある。

皇帝の花嫁探しが本当なら、おそらくここに集められたのは上流貴族の令嬢ばかりだろう。
皇都が初めてではない辺境伯のエドガーはさすがにどっしりと構えているが、エリーヌはどうしても及び腰になる。


「なあに大丈夫さ。エリーヌは私の立派な娘なのだからね。堂々としていればいい」


エドガーに励まされ、なんとか頷き返す。笑顔が引きつったのは言うまでもない。


「ところでダリル様にはいつお会いできるのでしょうか」
「そうだな。私たちを招待した張本人が、到着してから一度も顔を見せないのだから困ったものだ」


あたりを見渡しても、彼の姿は見つけられない。そもそも広い庭には大勢の人たちがいるため、探し出すのも難しいだろう。