「陛下の魔石です」
「……私の? いや、そんなはずはないだろう。私のはここにある」


妙なことを言うダリルに反論するが――。


「いいえ、間違いなく、これも陛下の魔石なのです」
「〝これも〟とはどういうことだ」
「この話は私を含めた上皇と、陛下の亡き母君様、そして魔石加工師の四人だけが知る事実なのですが」


そう前置きをし、ダリルはリオネルが誕生したときの話をはじめた。


「強い魔力を持つ上皇夫妻からお生まれになった陛下は、当然ながらオーラを纏っていたのですが、そのオーラの大きさといったら」


両手をめいっぱい広げ、ダリルがそのスケールを表現する。反動で丸いお腹が台座にぶつかり、「おっと」とガラスケースを押さえた。
ダリルによれば、あまりの大きさでバングルに留められる魔石への加工ができなかったと言う。


「魔石研究者である私ですら金色のオーラは古い言い伝えでしか知らなかったうえ、一般的な大きさの魔石にもできないと言うんですから。そのときの驚きは今でも鮮明に覚えておりますよ」