縦長の丸い鏡の前に置かれた椅子に座り、早速支度がはじまる。ピンクブラウンの長い髪を丁寧にとかし、結い上げていく。白とピンクの顔料で肌の色味を調整し、唇には赤い紅を差した。


「今日はどういう方たちが集まっているんですか?」
「皇都の貴族令嬢の方々が大勢招かれているようです」
「皇都の……。それでは私のように遠い地から招かれた方は、ほかにいらっしゃらないのかしら……」


皇都で暮らす貴族令嬢であれば、みな洗練されているだろう。そのような人たちに混じって歓談など、自分にできるだろうかとエリーヌは不安になった。


「私もよく存じ上げないのですが、ほかの侍女たちの話によれば、今日のパーティーは皇帝陛下の妃殿下候補を集めたものだとか」
「妃殿下候補!?」


あまりにも驚く話をされ、エリーヌは声が裏返る。


「はい。皇帝陛下にご結婚のご意思がないのを上皇陛下がご心配されていらっしゃるそうで」


今日のパーティーでお眼鏡に叶う女性がいれば……ということだろうか。