「そうですね……ちょっとまだ考えがまとまらなくて。あの、他のドレスも拝見していいですか?」

「ええ。かまいませんよ」


 カランは仕立て屋に許可をとり、ドレスを手にとり調べはじめた。


(カランったら……私のためにあんなに色々考えてくれているのに)


 今のところはそれを口にしていない。彼女は相当慎重なタイプのようだ。何着も何着もドレスを見比べて、首をひねったり唸ったりしている。


【長いわね……いつまで続ける気かしら?】


 どのぐらい経っただろう? 仕立て屋が心のなかで小さくため息をつく。顔では笑っているが、若干疲れてきたようだ。現状一着もカランのおめがねにかなったドレスがなく、時間だけが過ぎていくのだから仕方ない。


(もうすぐお昼になってしまうし)


 そろそろ一着選んで着替えを済ませなければならない。


「カラン、あの……」


 と、オティリエが声をかけたそのとき、カランの表情がガラリと変わった。