(ヴァーリック様はどうして私を迎えにいらっしゃったの?)


 こたえを求めてオティリエがヴァーリックを見つめると、目の前に手が差し出される。


「オティリエを僕の補佐官として迎え入れたいんだ」

「え?」


 聞き返したのはオティリエだった。
 それは他人の心の声が聞こえるオティリエにもまったく思いがけない言葉で。彼女はヴァーリックを見つめつつ、驚きに目を瞬いている。


「補佐官、ですか? この私が?」

「そう。この家を出て、僕のために力を貸してほしい。どうだろう?」


 ヴァーリックが優しく微笑む。オティリエの胸がドキドキと高鳴った。


(補佐官? 私が殿下の? ……本当に?)


 彼の役に立ちたいと願ったのはつい昨日のこと。信じられない気持ちでヴァーリックを見つめれば、彼はコクリと大きくうなずく。たとえ心の声が聞こえずとも、彼にはオティリエの気持ちが――彼についていきたいと思っていることがわかるのだろう。オティリエの頬が真っ赤に染まっていく。ヴァーリックはそっと目を細めた。