(お父様はなにもわかっていらっしゃらない)


 形だけの謝罪になんの意味があるだろう? 彼はなぜオティリエに対して謝らなければならないのかまったく理解をしていない。ただただヴァーリックが望むから、彼の望みどおりの行動をとっているだけなのだ。


「……この件については後日じっくりと話を聞かせてもらうつもりだ」

「そうですか……。いや、しかし、殿下にはなんの関係もないお話でございますし、イアマには私からしっかりと言い聞かせますので」

「関係あるよ。僕はオティリエ嬢を迎えに来たんだから。使用人からそう聞かなかった?」


 ヴァーリックが父親に冷たい視線を投げかける。父親はコクコクうなずきながら、ヴァーリックの顔色をチラチラうかがった。


「ああ、はい。たしかにそのようなことをお聞きしました。しかし、私には殿下がオティリエを迎えに来た理由がとんとわからなくて……」


 父親が大きく首をひねる。オティリエ自身もヴァーリックの来訪の目的を未だに知らない。