「僕は最初、応接室に案内されたんだよ? オティリエ嬢とあなたを呼んできます、って使用人たちから言われてね。けれど、待っているあいだに二階からものすごい音と罵声が聞こえてきて、いてもたってもいられなくて様子を見に行ったんだ。そうしたらオティリエ嬢が本棚の側で倒れていてね。……なんなら僕の記憶を読みとってみる? 僕がなにを見て、なにを聞いたか。そうしたら信じられるだろう?」
「そんな! 滅相もございません!」
父親はブルブル震えながら何度も何度も頭を下げる。それから「申し訳ございません」と口にした。
「――ねえ、侯爵は一体誰に、なにに対して謝っているのかな?」
ヴァーリックが尋ねる。父親はキョトンと目を丸くした。
「え? それは……当然殿下の発言を疑うようなことに対して謝罪を申し上げているのですが」
「侯爵……僕はそんなことはどうでもいいんだ。それよりも、君には他に謝るべき相手がいるだろう?」
これまで温厚だったヴァーリックの表情が途端に険しくなる。
【なんだ? 殿下は一体どうしてそんなに怒っていらっしゃるんだ? 一体……】
父親はしばらく考え込んだあと、ヴァーリックの視線の先にオティリエがいることに気づき、それからもう一度頭を下げた。
「オティリエ、その………すまなかった」
「……いえ」
オティリエが返事をする。胸がズンと重苦しくなった。
「そんな! 滅相もございません!」
父親はブルブル震えながら何度も何度も頭を下げる。それから「申し訳ございません」と口にした。
「――ねえ、侯爵は一体誰に、なにに対して謝っているのかな?」
ヴァーリックが尋ねる。父親はキョトンと目を丸くした。
「え? それは……当然殿下の発言を疑うようなことに対して謝罪を申し上げているのですが」
「侯爵……僕はそんなことはどうでもいいんだ。それよりも、君には他に謝るべき相手がいるだろう?」
これまで温厚だったヴァーリックの表情が途端に険しくなる。
【なんだ? 殿下は一体どうしてそんなに怒っていらっしゃるんだ? 一体……】
父親はしばらく考え込んだあと、ヴァーリックの視線の先にオティリエがいることに気づき、それからもう一度頭を下げた。
「オティリエ、その………すまなかった」
「……いえ」
オティリエが返事をする。胸がズンと重苦しくなった。