「無理だって言われたら、物わかりのいいふりはやめて、オティリエを口説き落とすつもりだった。どれだけ時間がかかっても、どれだけみっともなくとも、僕が君のことをどれほど好きかを伝えようって……僕を選んでほしいって伝えようと決めていた。僕にはオティリエしか考えられないから」

「そ、そんなことを考えていらっしゃったなんて……」


 思わぬことにオティリエは全身がカッと熱くなる。ヴァーリックは嬉しそうにほほえみながら、オティリエのことを抱きしめ直した。


「ああ……幸せだ。ねえ、夢じゃないよね?」


 コツンと音を立てて二人の額が重なり合う。ヴァーリックの鼓動の音が、肌の熱さがダイレクトに伝わってきて、オティリエは首を横に振る。


「夢じゃありませんよ」


 まだまだ自分に自信なんてない。それでも、ヴァーリックが幸せだと言ってくれるから……幸せになってほしいと思うから。だからもう、オティリエは迷わない。


「改めて、僕と結婚してくれますか?」


 ヴァーリックが尋ねる。あくまでオティリエの意思で自分を選んでほしい――彼のそんな気持ちが伝わってきて、オティリエはふふっと口元をほころばせる。


「……はい」


 あまりにも嬉しそうなヴァーリックの笑顔。オティリエの胸が温かくなる。


(ヴァーリック様、私が絶対、あなたを幸せにします)


 そう心のなかでささやきながら、オティリエも満面の笑みを浮かべるのだった。