「自信なんていらない。だって僕はオティリエ以外の女性と結婚しても幸せになれないから。……オティリエじゃなきゃダメなんだ」


 熱い眼差しが、真剣な表情がオティリエの胸を焼く。ヴァーリックの涙が左手を濡らす。いつも理性的なヴァーリックが見せる強く激しい感情。それは求婚というより懇願に近かった。


「オティリエ、君が僕に幸せになってほしいと言うのなら、一生僕の側にいて。僕を幸せにして。……僕が君を絶対に幸せにするから」


 ヴァーリックに握られた手のひらは温かく、とても力強い。戸惑いながら、オティリエはそっと握り返す。


「……本当に、私でいいのですか?」


 オティリエの問いかけに、ヴァーリックは大きくうなずく。


「オティリエじゃなきゃダメだ。絶対、君以外考えられない」


 再びギュッと抱きしめられオティリエは思わず目をつぶる。全身が、心が燃えるように熱く甘ったるい。

 これまで経験したことのない強い幸福感。求め、求められる喜び――想いが通じ合った高揚感は二度と味わうことができないだろう。オティリエはヴァーリックの胸に顔を預け、彼のことを抱き返す。


「それにね、もしも断られても僕は諦める気なんてなかったよ」

「え? そうなんですか?」


 オティリエは驚きのあまり大きく目を見開く。
 命じるのではなくわざわざオティリエの意思を尋ねてくれたのだから、てっきり断ってしまえばそれまでだと思っていたのだが。