【オティリエ】


 触れたい。
 抱きしめたい。
 愛していると伝えたい。
 ……ずっと一緒にいたい。


 ――それらは心の声、言葉として聞こえてきたわけではない。けれど、オティリエにはわかる。それはたしかにヴァーリックからオティリエに向けられた感情だった。


「ヴァーリック様」


 意を決してオティリエがヴァーリックに声をかける。彼は「あっ」と声を上げ、一瞬だけ恥ずかしそうな表情を浮かべる。それからいつものようにとびきり優しくほほえんだ。


「オティリエ、今日はエアニーからお茶に誘われたんだよね? 楽しかった?」


 先ほどまで聞こえていた心の声が嘘のよう。ヴァーリックは穏やかに瞳を細めてオティリエのことを見つめた。


「こんなところにいたら風邪を引くよ。部屋まで送らせるから、そろそろ……」

「私……ヴァーリック様のことが好きですよ」


 オティリエが言う。ヴァーリックは目を見開き「え?」と口にした。