「オティリエにお茶会に来てほしくて」

「ヴァーリック様……」

「言っとくけど、補佐官としてじゃないよ? だからこそ、わざわざ僕の部屋まで来てもらったんだ」


 ドキドキと心臓が鳴り響く。


(私は招待客のリストに入っていないのに……)


 だってこれは、ヴァーリックの婚約者を選ぶためのお茶会だ。オティリエが呼ばれていいものではない。招待状はこの場でヴァーリックに返すべきだ……そう思っているはずなのに、手が、口が、思うように動かない。


「僕が贈ったドレスを着て、オティリエにお茶会に来てほしい」


 ヴァーリックの言葉に喉のあたりがギュッと熱くなる。胸が熱く、ひどく苦しい。こんな顔、ヴァーリックに見せるわけにはいかない。オティリエはうつむいたまま「けれど……」と小さくつぶやく。


「オティリエがいなければ意味がないんだ」


 つながれた手のひら。オティリエの耳にヴァーリックの心臓の音が聞こえてくる。彼女と同じかそれ以上に早い。【断らないでほしい】と、切実で祈るような気持ちが嫌というほど伝わってきて、オティリエは思わず泣きそうになる。


「行きます」


 それがヴァーリックの望みだから……そう言い訳をしながら、オティリエは返事をする。


「うん。待ってる」


 ふわりと優しく抱きしめられ、オティリエはギュッと目をつぶった。