「あの……オティリエです。ヴァーリック様にひとことお礼を言いたくて……」


 待ち構えていたのだろうか? すぐに扉が開き、オティリエはヴァーリックから中に招き入れられた。


「ヴァーリック様、あのドレスは……」

「オティリエに渡したいものがあるんだ」

「え? だけど……」


 すでにドレスはもらっている。あのドレスは間違いなくヴァーリックからの贈り物だ。だからこそ、オティリエは今ここに来た。あれは自分がもらってもよいものなのか――ヴァーリックの真意をたしかめるために。


「これ、もらってくれる?」

「え? これは……」


 手渡されたのは何の変哲もない一枚の封筒だ。……けれど、オティリエには嫌というほど見覚えがある。なぜならそれは、つい先ほどまで彼女が何枚も何枚も宛名を書き、王妃に託してきたものと同じだったから。


「僕が書いたんだ」


 ヴァーリックが言う。封筒の表に記されたオティリエの名前。封を開き、中を見る。お茶会への招待状――オティリエが令嬢たちのために書いていた文面と同じものだ。