「本当! すっごく可愛いです。これ、絶対オティリエ様に似合いますよ! 贈り主のかた、オティリエ様のことをよくわかっていらっしゃるなぁ」


 白いブラウス地に薄紫のリボン、濃い紫のスカートがオティリエの雰囲気にとてもあっている。彼女を知らなければ選べないドレスだ。


(というかこれ、絶対に高価な品よね……)


 鮮やかな染色の美しい布地に繊細な刺繍。貴族のパーティーやお出かけの際に好まれそうなデザインである。

 と、ドレスの下にカードを見つけてオティリエは手にとってみる。その途端、馴染み深い香水の香りが鼻腔をくすぐり目頭が熱くなった。


「……カラン、ちょっと出かけてくるわね」

「え? あ――行ってらっしゃいませ」


 まだ中身も読んでいないのに……カランは首を傾げつつも笑顔を浮かべる。それからオティリエを温かく見送った。


(急がなきゃ……今ならまだ執務室にいらっしゃるわよね?)


 と、オティリエが部屋を出てすぐ、顔馴染みの騎士――ヴァーリックの護衛騎士だ――がオティリエのことを呼び止める。