(ヴァーリック様が私に会いたがっていた?)


 まさか。そんなことがあっていいのだろうか? にわかには信じがたいことだ。
 ……けれど、彼がオティリエの名前が聞こえただけで飛んできてくれたこと、切なげな表情に心の声が、ヴァーリックの気持ちを如実に表している。


「あの、私、仕事のことが気になって……」


 事前に用意しておいた言い訳の言葉を紡ぎながら、オティリエはほんのりとうつむいていく。


「こんなに執務室に顔を出さないのははじめてだから……だから……」


 違う。本当は全然そうじゃない。
 ヴァーリックに会いたくて、居ても立ってもいられなくて、あれこれ言い訳まで用意してここまで来たのだ。彼は本心を打ち明けてくれたのに。オティリエはそれでいいのだろうか? 誤魔化して、嘘をついて、それで本当にいい?

 オティリエは首を横に振り、顔を上げる。それからまっすぐにヴァーリックの顔をのぞきこんだ。