「疲れました。だけど、本当によかった……頑張った甲斐がありました」


 自分の努力がきちんと実を結んだこの感覚は、そう簡単に経験できるものではない。もうしばらくこの達成感に浸っていたい――オティリエはそろりと顔を上げた。


「あの……ヴァーリック様は先にお休みください。私はもう少ししたら部屋に帰りますので」


 今ここにいるのはオティリエのわがままだ。上司であるヴァーリックに付き合ってもらうのは申し訳ない。先に帰ってもらえたほうがありがたいのだが。


「ううん。僕はここに――オティリエの側にいたいんだ」


 ヴァーリックはそう言ってオティリエの隣に腰かける。それからふっと目元を和らげた。


「君がいてくれてよかった。本当に、心からそう思っているよ」

「……ヴァーリック様」


 ヴァーリックにとってかけがえのない補佐官になりたい……そう思って今日までずっと頑張ってきた。彼はずっとオティリエを必要としてくれていたものの、その言葉に見合うだけの働きができていたわけではない。けれど今、彼の期待に追いつけたのだとようやく胸を張って言うことができる。


「はい」


 力強いほほ笑み。そんなオティリエを見つめつつ、ヴァーリックは彼女の手を握った。