「休養……うん、そうだね。それも大事だよね。オティリエのことだから、明日も資料を読み込もうとか思っていそうだし」

「……?」


 ヴァーリックが少しだけ言いづらそうに視線を泳がせる。
 

(どうかしたのかしら?)


 オティリエが首を傾げると、ヴァーリックは彼女に向き直った。


「オティリエ……もしよかったら、明日街に出かけない?」

「え? 街に、ですか?」


 思いがけない提案に、オティリエは目を丸くする。


「うん。君を城に連れてきた日、窓から街を嬉しそうに眺めていただろう?」

「あ……はい。すみません、姉からみっともないから止めるようにって咎められていたんですけど」


 どうやらまた、無意識に窓の外を眺めてしまっていたらしい。


「謝る必要なんてない。むしろ僕はこの街を気に入ってもらえて嬉しいんだ。だから、せっかくの休みだし、王都を案内できたらなぁって」

(王都を……)


 もしもお願いできるなら、どんなにいいだろう。窓から眺めるだけだった美しい街並みを、自分の足で見て歩けたら楽しいに違いない。
 けれど、案内人の負担を考えるとどうしても気兼ねしてしまう。オティリエはチラリとエアニーを見上げた。