リシャールは、シュゼットの手をぎゅっと握った。

 そして、呆然自失となったアンドレと縄を抜け出そうとあがいていたカルロッタに眼光鋭い視線を向けた。

「シュゼットお姉様を苦しめたお兄様とカルロッタに罰を与えます。二人を国外へ追放し、ジュディチェルリ侯爵からは爵位を取り上げなさい!」

 新たな王の命令に、衛兵たちは忠実に動いた。

 議会場から連れ出されるカルロッタとアンドレ。
 シュゼットは姉に声をかけようとして……やめた。

(大好きでしたと伝えても、お姉さまはからかいだとお思いになるでしょう)

 カルロッタには辛い目に合わされた。
 だけど、シュゼットは心の底から姉を嫌ってはいなかった。

 実家で蔑まれていた間、シュゼットを支えてくれていたのはカルロッタのおさがり品だった。
 彼女がおさがりを与えてくれなければ、シュゼットは侯爵家にいながら生活に困っていただろう。

(最初の頃は、お姉さまも善意から私におさがりをくれていたのです)

 けれど、それを使用人に知られてからは、虐めの一環ということにしないとカルロッタ自身も非難された。

 カルロッタは、意地悪な姉を演じているうちにおかしくなってしまったのだ。
 そういう意味では彼女も被害者と言える。

「リシャール様。どうぞ王座へ」

 ラウルにうながされて、リシャールはこくりと頷く。
 その表情は幼くも、どことなく前王を思わせる威厳があった。

 シュゼットは、リシャールの手を取ってアンドレが座っていた椅子に導く。
 リシャールが座ると、新たに生まれた少年王に、貴族たちはいっせいにかしずいた。