「そんな……」

 ショックを受けたアンドレは、椅子から崩れ落ちて床に膝をついた。
 裏切りの証である銀髪が揺れる。

 現レイエ伯爵であるジュリーも注目を集めたが、彼女もまた父の裏切りにあった身なので責める者はいなかった。

 宰相は、騒然とする会議場を見渡して、冷静にと呼びかけた。

「我らは掲げる人物を間違っていたようですね。アンドレ様は政を放棄して遊び呆けておられたので、丸投げされた仕事は全て私の愚息が処理していました。不誠実な国王で、さらに前王の血を引いていないとなれば、もはや在位は認められません」

 そこで言葉を切ると、宰相は演台に両手をついた。

「議会の代表として現国王の退位を求めます。および、継承権第二位であるリシャール王弟殿下の即位を決議いたしたい!」

「異議なし!」
「リシャール様を王座へ!」

 わっと歓声が沸いた。

 貴族たちの好意的な反応を確認したラウルは、目を丸くしていたリシャールに手を伸ばす。

「リシャール様、こちらへ」
「う、うん」

 リシャールは、ドキドキする胸を手で押さえてシュゼットとラウルの元に歩み寄った。
 ぼう然としている兄アンドレを不憫そうに見てから、シュゼットの手を取る。

「シュゼットお姉様。僕に国王が務まるでしょうか?」
「リシャール様なら大丈夫です。きっとフィルマン王国の歴史に名を残す、素晴らしい国王になられます」
「そうなるように、お姉様にそばで見守ってほしいです……」