攻勢が入れ替わったのを肌で感じて、シュゼットは息をのんだ。

「カルロッタ嬢、あなたは幼い頃から王妃様を虐めるのが趣味だった。それは彼女がご結婚されて、宮殿に移られたあとも続きました。彼女がどうやって王妃様を苦しめていたか、ここで明らかにしましょう。そのために、衛兵長と王妃様の侍女を呼んでいます」

 ラウルに呼ばれて、宮殿で見たことのある衛兵とメグが列になって会議場に入ってきた。
 シュゼットは、メグとここで会えるとは思っていなかったので驚いた。

 演台にたどり着いた衛兵長は、敬礼してから話し出す。

「申し上げます。我々衛兵隊は、国王陛下に命じられて、夜な夜な陛下のもとへカルロッタ様をご案内しておりました。カルロッタ様がいらっしゃらない夜には、下町の酒場から来た娘たちが代わる代わる宮殿に来て、陛下と一夜を過ごすので警備に難儀したものです」

 入れ替わるようにして、メグが前に出た。

「わたしは王妃様の侍女長として仕えております。結婚式の当夜、王妃様は国王陛下のおとないを待っておられましたが、ついに陛下は寝室にいらっしゃいませんでした!」

 思い出して腹を立てるメグは、涙の浮かぶ目じりをハンカチで拭った。

「カルロッタ様が陛下を誘惑して、王妃様の寝室に行かないように仕向けていたのです! その日からずっと王妃様は一人寝をなさっておいでです。毎晩、美しく支度を整えて待っておられますのに、陛下は一度も顔を見せてくださいません。結婚して一度も夫にかえりみられないなんて、こんな酷いことがありますか!? 王妃様がかわいそうです……」

 涙交じりの悲痛な訴えに、ラウルは神妙に頷いた。

「王妃様は結婚してから陛下の非道な行いに苦しんでおられました。私は国王補佐としてこの件を重大に受け止め、王妃様の話し相手となっていたのです。王妃様、そうですね?」

 うながすようなラウルの声に、シュゼットは答えようとした。
 けれど、どうしても声が出せない。

 喉から出るのはヒュウヒュウという風の音のみ。

 ここで証言しなければ、せっかくのラウルの思いを無駄にしてしまうというのに……!

『……エメラルドの下』