議会にざわっとした動揺が走った。

 ラウルの方を見るのが怖くて、シュゼットは目を伏せる。
 その様子は事実だと認めているかのようだ。

「へえ……。虫も殺さないような顔で、やることはやってたんだ」

 自分のことは棚に上げるアンドレに、カルロッタは上機嫌で頷く。

「そのようですわ。あたし、王太后様が主催の舞踏会の最中に見ましたの。二人が人目をはばかって会っているところをね」

(違います。ラウル殿は、お姉さまに陛下を取られた私を慰めに来てくれたんです!)

 声が出ないか口を開けてみる。
 けれど、息は音を結ばずに喉を素通りしていった。

 悔しくてシュゼットは奥歯を噛んだ。

(裏切ったのはお姉さまと陛下の方だと言ってやりたいのに)

 これでは何もできない。
 身を固くするシュゼットに、アンドレはうろんな視線を向けた。

「言い訳なら聞くけど?」
「…………」

「無視か。まあいいや。もう一人の裏切り者もそこにいるし」

 アンドレは、シュゼットを追及するのは諦めて標的をラウルに変えた。

「王妃と特別な関係だったというのは事実なの?」
「はい」

(えっ!?)